父は複数のアパートを持っていますが、税理士のセミナーに最近参加してアパートの建物を子供に贈与すれば相続税対策として有効であると聞いたようです。そして、私は父から建物3棟をもらい、相続時清算課税制度の適用を受けました。アパートの建物のうちの1棟について、銀行からの借入金が残っており、この借入金は父ではなく建物の贈与を受けた私が返済していくつもりです。贈与を受けた後に税務調査が入り、税務署の調査官より、この贈与は負担付贈与に該当すると指摘され、差額の贈与税や延滞税、過少申告加算税を納めることになってしまいました。負担付贈与の場合は、贈与税の負担が大きくなるのですか?

 

Q.
 父は複数のアパートを持っていますが、税理士のセミナーに最近参加してアパートの建物を子供に贈与すれば相続税対策として有効であると聞いたようです。そして、私は父から建物3棟をもらい、相続時清算課税制度の適用を受けました。アパートの建物のうちの1棟について、銀行からの借入金が残っており、この借入金は父ではなく建物の贈与を受けた私が返済していくつもりです。
 贈与を受けた後に税務調査が入り、税務署の調査官より、この贈与は負担付贈与に該当すると指摘され、差額の贈与税や延滞税、過少申告加算税を納めることになってしまいました。負担付贈与の場合は、贈与税の負担が大きくなるのですか?

A.
 ご質問のケースでは、建物3棟の評価額は、A棟とB棟の相続税評価額が各1,500万円、C棟の相続税評価額が2,000万円(時価4,000万円)、借入金が1,500万円です(時価=簿価と仮定)。
当初の申告では、次のように算出していました。
 贈与税:(A棟1,500万円+B棟1,500万円+C棟2,000万円-1,500万円)-2,500万円=1,000万円 1,000万円×20%=200万円
 そして、税務署から正しくは次のとおりであるとの指摘を受けました。
 贈与税:(A棟1,500万円+B棟1,500万円+C棟4,000万円-1,500万円)-2,500万円=3,000万円 3,000万円×20%=600万円
 譲渡所得:1,500万円-4,000万円=△2,500万円(借入金の金額が時価の50%に満たないため、損失はなかったものとされます。)
 したがって、差額400万円の贈与税や、延滞税、過少申告加算税を納めることになりました。負担付贈与については、贈与税の計算は相続税評価額ではなく時価で行うべきでした。また、税理士のセミナーで聞いた内容を十分に理解しないまま、自ら贈与を行ってしまったことにも問題があります。

 建物に家賃収入があれば、家賃収入は建物の名義人に帰属します。元来資産家で相続税の負担が大きいような場合、その家賃収入より税金や経費等を差し引いた手取部分の現金が貯まっていき、相続財産が増えます。したがって、この場合に賃貸を行っている建物だけを子供に贈与し、家賃収入を子供に帰属させることにより、現金が増えるのを抑え、かつ、子供が将来の相続税の納税資金を蓄えておくことが可能です。
 ただし、「負担付贈与」については留意が必要です。贈与を受けた側に債務を負担させることを条件にした財産の贈与のことを、負担付贈与といいます。負担付贈与を個人より受けたのであれば、贈与財産の価額(時価)より負担額を差し引いた価額に贈与税が課されます。
 また、贈与した親は、借入金相当で売却したとみなされ、譲渡所得税が課されます。なお、借入金の額が時価の50%に満たない場合、譲渡損失はなかったものとみなされ、他の譲渡所得との損益通算は認められません。
 負担付贈与であれば、相続税評価額ではなく時価が、建物の評価額とされ、贈与税の負担が予想外に大きくなる恐れがあります。
 では、借入金がゼロであれば安心できるのかということについては、そうともいい切れません。賃貸を行っている建物については、大半の場合に敷金や保証金とった返還義務のある債務があります。敷金相当額の現金の授受がなければ、負担付贈与に当たり、予想外の負担を強いられてしまうと思われます。敷金相当額の現金も含めて、贈与者から受贈者に移せば、負担付贈与とならず、このような問題は生じません。
 建物を贈与して所得分散を行う場合、一般的には土地を贈与せずに建物だけを贈与します。家賃収入は建物に帰属することから、建物だけを贈与するといいでしょう。土地も贈与する場合には、贈与税の負担が大きくなります。また、相続後は、もらった子供が事業を続けていきやすくなるよう、遺言によって土地の行き先を決めるといいでしょう。ただし、建物と土地の所有者が違えば、土地の相続税評価額が高くなることもあり、留意しなければなりません。
 ご質問のケースでは、相続時清算課税制度によって建物の贈与を行ったことから、建物のみを将来の相続時に持ち戻すこととなります。大きいメリットの一つが、その建物の家賃収入を持ち戻さなくても構わないことです。
 また、親の所得税の負担が大きい場合には、資産管理会社を設けて会社に売却するという選択肢も考えられます。税理士に相談の上、どのような方法を選ぶかを決めるといいでしょう。

最新のお知らせ

お知らせ

Copyright© 2014 かんたん相続丸わかり All Rights Reserved.