私の父はハワイ好きで、同地のコンドミニアムを5年前に購入し、同地に母と出向いた際には別荘として使用していました。しかし、一人息子の私は英語を話せず、父が死去したら誰がコンドミニアムを相続して管理していくのかと心配もしていました。父が昨年死去し、相続人である母と私で遺産分割協議を行い、英語を話せる母がそのコンドミニアムを引き継ぐこととなりました。それ以外の国内の自宅や預金といった財産についても、母との遺産分割の話し合いが終了し、そのコンドミニアムを含めた遺産全体につき、母と私で2分の1ずつ相続することで合意しました。遺産分割が決まったことから、相続税の申告をお願いしている税理士に報告したところ、母がそのコンドミニアムを相続したらアメリカで納める相続税が日本の相続税から控除できないことから、それは私が相続すれば税金面で有利だったのにと指摘されてしまいました。どうして、そのようなことになるのでしょうか?
Q.
私の父はハワイ好きで、同地のコンドミニアムを5年前に購入し、同地に母と出向いた際には別荘として使用していました。しかし、一人息子の私は英語を話せず、父が死去したら誰がコンドミニアムを相続して管理していくのかと心配もしていました。
父が昨年死去し、相続人である母と私で遺産分割協議を行い、英語を話せる母がそのコンドミニアムを引き継ぐこととなりました。それ以外の国内の自宅や預金といった財産についても、母との遺産分割の話し合いが終了し、そのコンドミニアムを含めた遺産全体につき、母と私で2分の1ずつ相続することで合意しました。
遺産分割が決まったことから、相続税の申告をお願いしている税理士に報告したところ、母がそのコンドミニアムを相続したらアメリカで納める相続税が日本の相続税から控除できないことから、それは私が相続すれば税金面で有利だったのにと指摘されてしまいました。どうして、そのようなことになるのでしょうか?
A.
ハワイのコンドミニアムについては、一定の金額を上回れば、アメリカでも相続税が課されてしまいます。外国で納めた相続税は、日本の相続税から控除できるものの、配偶者が日本の相続税を納めない場合、外国で納めた相続税を控除できません。
配偶者の税額軽減というのは、配偶者が遺言や遺産分割で相続した財産が、1億6,000万円か、配偶者の法定相続分のうち、いずれか多い金額までであれば相続税が課されないという制度のことです。相続税の申告期限までに遺産分割が完了していなければ、税額軽減の対象となりませんが、申告期限後3年以内に分割が決まる見込みである場合には、一定の届出書を提出し、後に適用を受けることもできます。ご質問のケースでは、母が法定相続分まで相続しており、遺産分割も完了していることから、母には日本の相続税は課されません。
外国税額控除というのは、海外にある財産を相続した場合において、その財産につきその国の相続税に相当する税金がかかったとき、その外国の相続税相当額のうち一定額まで、日本の相続税より控除することができるという制度のことです。一つの財産につき、海外と日本で二重に税金がかかることを防ぐための制度です。ご質問のケースでは、相続人がハワイのコンドミニアムを相続し、その財産につき、アメリカでも日本でも相続税がかかっていることから、アメリカで納めた相続税を日本の相続税より控除できます。なお、アメリカにある財産が基礎控除額6万ドル又は日米租税条約による基礎控除額の特例額を上回る場合に、日本の居住者に対してアメリカの遺産税(日本の相続税に当たる)が発生します。遺産税にも日本の相続税における「配偶者の税額軽減」のような特例が存在するものの、日本の居住者には適用されません。
配偶者の税額軽減や外国税額控除以外にも、相続税の税額控除が存在します。控除される順序は、贈与税額控除、配偶者の税額軽減、未成年者控除、障害者控除、相次相続控除、外国税額控除とされています。
ご質問のケースでは、母については、第一に配偶者の税額軽減、第二に外国税額控除が適用されますので、配偶者の税額軽減の段階で税額がゼロとなれば、外国税額控除が控除しきれなくなります。仮に、遺産分割でご質問者がコンドミニアムを相続すると、外国税額控除の適用を受けることができ、家族全体の相続税額を抑えることができると思われます。