私の夫は早くに死去し、相続した収益不動産の収入によって暮らしてきました。しかし、近頃は物忘れが多く、これからの不動産管理が心配になってきました。収益不動産は比較的安定した収入を得られているものの、今後大規模修繕を要すると予想され、工事業者との折衝や契約も大きな負担と感じていました。民事信託を知ったのは、そのような時期です。不動産の名義を同居する長男の名義に今のうちに変更し、不動産の管理をしてもらいつつ、家賃収入は引き続き受領することができる制度です。長男も次男もこの不動産を欲しいと思っていると分かっていましたが、それまではどちらに相続させるかを伝えていませんでした。そして、このたび長男に管理させると決心しましたので、長男に承継させることにしました。後に長男が円滑に承継できるように、遺言代用信託として自らの死去後の承継先を長男に指定し、長男には「次男にまだ話さないで」と伝えていました。しかし、ある時、長男にこの不動産を承継させようとしていることが次男に分かってしまい、次男によると知り合いの不動産業者から聞いたということでした。長男に承継させると知った次男は、非常に気分を害しているようですが、信託の内容が次男に知られることを覚悟すべきだったのでしょうか?
Q.
私の夫は早くに死去し、相続した収益不動産の収入によって暮らしてきました。しかし、近頃は物忘れが多く、これからの不動産管理が心配になってきました。収益不動産は比較的安定した収入を得られているものの、今後大規模修繕を要すると予想され、工事業者との折衝や契約も大きな負担と感じていました。民事信託を知ったのは、そのような時期です。不動産の名義を同居する長男の名義に今のうちに変更し、不動産の管理をしてもらいつつ、家賃収入は引き続き受領することができる制度です。長男も次男もこの不動産を欲しいと思っていると分かっていましたが、それまではどちらに相続させるかを伝えていませんでした。そして、このたび長男に管理させると決心しましたので、長男に承継させることにしました。後に長男が円滑に承継できるように、遺言代用信託として自らの死去後の承継先を長男に指定し、長男には「次男にまだ話さないで」と伝えていました。
しかし、ある時、長男にこの不動産を承継させようとしていることが次男に分かってしまい、次男によると知り合いの不動産業者から聞いたということでした。長男に承継させると知った次男は、非常に気分を害しているようですが、信託の内容が次男に知られることを覚悟すべきだったのでしょうか?
A.
ご質問者の存命中はご質問者を委託者、受益者と設定しており、不動産の名義は長男に変更しても、その段階では贈与税は課されません。また、遺言代用信託ですので、ご質問者の死去後は長男が受益者となり、この段階で長男に相続税が課されます。遺言代用信託によると、委託者の死去により、事前に指定した人を受益者として経済的価値を承継させることが可能です。遺言を用いることなく、遺言と同様の効果を得ることができます。
不動産の信託は、「信託目録」として登記簿に記されます。ご質問のケースでは、好立地の不動産だったことから、次男の知り合いである不動産業者が登記簿を確認していた際に、偶然見つけてしまったようでした。信託目録には信託の内容が記されていることから、登記簿を見れば、長男に将来承継させようとしていることが分かってしまいます。
信託は、高齢者の財産を管理するのに非常に役立つ制度です。特に、不動産は信託目録に登記されますので、自分の意思や権利関係を明確化することが可能です。しかし、登記されることにより、内容が公表されることとなりますので、オープンにしても差し支えない内容かどうかを慎重に考慮した後に、実行することが重要です。