私は機械修理業を地方で営む法人の代表取締役です。各エンジニアの腕が重要な職人仕事であることから、人を大切にする社風であり、近隣の法人より待遇もとても良いという特徴がありました。人が財産であるために団塊世代の大量退職の頃には採用が困難で大変でしたので、リーマンショック後の就職難といわれた頃には採用を積極的に行いました。その頃は一般的には不況といわれましたが採用余力があったのは、当社の業態にその理由があります。大手の自動車メーカーの構内に出入りでき、社員を常駐させて修繕作業を一手に引き受けることにより、高収益の仕事を継続して行うことができたからです。順調な業績により当社の株価は上がり続けていた状況において、交通事故で父が突然死去しました。その後しばらくして、顧問税理士から相続税の試算結果の報告がありました。想定外の納税額に驚いたものの、納税猶予制度について顧問税理士から説明がありました。父が存命中に自社株の承継方法に関する相談を顧問弁護士にしており、納税猶予制度の適用を受けようと経済産業大臣の確認を得ていたのです(税制改正後は経済産業大臣の事前確認は必要なくなっています)。自社株を承継してから、法人に株式を譲渡して納税資金を準備するという方法もあると、顧問税理士に教えてもらいました。しかし、相続を考慮して準備してくれていた父の考えを重視したく、また、発行済株式の3分の2まで8割の税金が猶予される点が大変魅力的に思えましたので、納税猶予制度を活用して株式を承継することに決めました。しかし、頼りにしていた大手自動車メーカーの工場閉鎖が昨年末に決定しました。いろいろと仕事を探したものの、積極的な採用戦略の結果として、現在の雇用条件のままで全員を雇うことが難しくなりました。したがって、仕方なく一律の賃金カットを提示したところ、特に近年入社した社員たちが続々と退職すると言い始めました。東京には賃金の良い仕事があり、家族がいるので仕方ないとのことでした。私は諦めていましたが、顧問税理士が工場閉鎖のうわさを聞き、深刻な表情で訪ねてきました。そして、納税猶予制度には「雇用継続要件」があり、納税猶予適用後5年間は雇用の8割を維持する必要があると指摘しました。そこで、仕方なくかつて購入した収益不動産を処分することで当面の賃金を維持する見通しを立て、従業員を引き止めました。しかし、業績悪化の状況下で抜本的なリストラに着手できないことから、特に取引金融機関からの評価は厳しくなってしまいました。解決策が見つからずに困っていますが、猶予が取り消されることなく株式を外部売却することはできないのでしょうか?

 

Q.
 私は機械修理業を地方で営む法人の代表取締役です。各エンジニアの腕が重要な職人仕事であることから、人を大切にする社風であり、近隣の法人より待遇もとても良いという特徴がありました。人が財産であるために団塊世代の大量退職の頃には採用が困難で大変でしたので、リーマンショック後の就職難といわれた頃には採用を積極的に行いました。その頃は一般的には不況といわれましたが採用余力があったのは、当社の業態にその理由があります。大手の自動車メーカーの構内に出入りでき、社員を常駐させて修繕作業を一手に引き受けることにより、高収益の仕事を継続して行うことができたからです。
 順調な業績により当社の株価は上がり続けていた状況において、交通事故で父が突然死去しました。その後しばらくして、顧問税理士から相続税の試算結果の報告がありました。想定外の納税額に驚いたものの、納税猶予制度について顧問税理士から説明がありました。父が存命中に自社株の承継方法に関する相談を顧問弁護士にしており、納税猶予制度の適用を受けようと経済産業大臣の確認を得ていたのです(税制改正後は経済産業大臣の事前確認は必要なくなっています)。自社株を承継してから、法人に株式を譲渡して納税資金を準備するという方法もあると、顧問税理士に教えてもらいました。しかし、相続を考慮して準備してくれていた父の考えを重視したく、また、発行済株式の3分の2まで8割の税金が猶予される点が大変魅力的に思えましたので、納税猶予制度を活用して株式を承継することに決めました。
 しかし、頼りにしていた大手自動車メーカーの工場閉鎖が昨年末に決定しました。いろいろと仕事を探したものの、積極的な採用戦略の結果として、現在の雇用条件のままで全員を雇うことが難しくなりました。したがって、仕方なく一律の賃金カットを提示したところ、特に近年入社した社員たちが続々と退職すると言い始めました。東京には賃金の良い仕事があり、家族がいるので仕方ないとのことでした。私は諦めていましたが、顧問税理士が工場閉鎖のうわさを聞き、深刻な表情で訪ねてきました。そして、納税猶予制度には「雇用継続要件」があり、納税猶予適用後5年間は雇用の8割を維持する必要があると指摘しました。そこで、仕方なくかつて購入した収益不動産を処分することで当面の賃金を維持する見通しを立て、従業員を引き止めました。しかし、業績悪化の状況下で抜本的なリストラに着手できないことから、特に取引金融機関からの評価は厳しくなってしまいました。解決策が見つからずに困っていますが、猶予が取り消されることなく株式を外部売却することはできないのでしょうか?

A.
 節税策として相続税の納税猶予制度は有効ですが、相続税の申告期限後5年間は特に厳格な要件があり、その間に要件に該当しなくなった場合には、猶予された税額に利子も加えて納税しなければなりません。納税猶予を受けて株式を承継したものの自らに後継者が現れなかった場合等において、株式を外部売却したときには、猶予が取り消されてしまいます。

 「非上場株式等についての相続税の納税猶予制度」は、相続等で後継者が先代経営者より非上場株式を取得し、その法人を経営する場合、その株式等の3分の2までにつき税額の8割に相当する額の納税を猶予するものです。平成21年度税制改正で導入され、平成25年度税制改正で要件が大幅に見直されました。例えば、雇用継続要件が5年間毎年8割以上確保から5年間の平均で8割以上確保に変更されたり、非同族の後継者が認められたりして、少し要件が緩和されたものの、事業承継についての厳格な要件が現在でも存在しています。
 相続税の納税猶予制度について、主としていかなる場合に納税猶予が取り消されるかを述べます。申告期限後5年以内については、一定の基準日における雇用の平均が相続時における雇用の8割未満となった場合や、後継者が法人の代表権を有しなくなった場合に、納税猶予が取り消されます。そして、納税者の死去等までの期間については、この制度の適用を受けた非上場株式等を譲渡等した場合や、法人が資産管理会社に該当した場合(一定の条件に該当するものを除く)に、納税猶予が取り消されます。
 相続税の負担が大きい法人は概して優良な法人であり、5年間に業績が急激に変わるということは想定しづらいかもしれません。しかし、他国での事象によって原油相場や為替相場等が激変し、事業の内容に大きな影響が及ぶケースは、現代では少なくないでしょう。状況は業種や業態次第かと思われますが、少数の得意先への依存度が高い法人や景気変動の影響を受けやすい法人は、より慎重に検討することが重要です。
 ちなみに、平成26年2月までに認定を取り消された企業数は約90社で、その割合は30%にもなっています。

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