父は資産家で、私は父の一人息子です。父は自分が死去したときに相続税の負担が大きくなるのを心配し、110万円までなら贈与税が課されないからと言って毎年私に贈与してくれていました。何年か前に、投資用としてワンルームマンションを購入することにし、それまでより多額の贈与をお願いしようと父に相談したら、2,500万円を贈与してくれることになりました。贈与税が課されるかもしれないと思い、Webサイトを見て、「相続時精算課税制度」を選択することで2,500万円までは贈与税が課されないと分かりました。税務署への届け出や申告は自分で行い、父からお金をもらうのはその年のみ2,500万円とし、翌年からは110万円に戻してもらっていました。昨年に父が死去し、相続税の申告を行う際に、以前2,500万円の援助を受けたことを忘れていて、税理士にそのことを伝えず申告書の提出を行いました。その後に税務署から「相続時精算課税制度による贈与財産」が相続税申告書に記されていないと指摘されました。そして、2,500万円の贈与を受けた翌年以降に父から毎年贈与を受けていた110万円についても、贈与税の期限後申告と相続税申告書への追加計上を行う必要があり、延滞税や加算税も含めて多額の納税をしなければならなくなりました。私は相続時精算課税制度をより理解する必要があったのでしょうか?

 

Q.
 父は資産家で、私は父の一人息子です。父は自分が死去したときに相続税の負担が大きくなるのを心配し、110万円までなら贈与税が課されないからと言って毎年私に贈与してくれていました。何年か前に、投資用としてワンルームマンションを購入することにし、それまでより多額の贈与をお願いしようと父に相談したら、2,500万円を贈与してくれることになりました。贈与税が課されるかもしれないと思い、Webサイトを見て、「相続時精算課税制度」を選択することで2,500万円までは贈与税が課されないと分かりました。税務署への届け出や申告は自分で行い、父からお金をもらうのはその年のみ2,500万円とし、翌年からは110万円に戻してもらっていました。
 昨年に父が死去し、相続税の申告を行う際に、以前2,500万円の援助を受けたことを忘れていて、税理士にそのことを伝えず申告書の提出を行いました。その後に税務署から「相続時精算課税制度による贈与財産」が相続税申告書に記されていないと指摘されました。そして、2,500万円の贈与を受けた翌年以降に父から毎年贈与を受けていた110万円についても、贈与税の期限後申告と相続税申告書への追加計上を行う必要があり、延滞税や加算税も含めて多額の納税をしなければならなくなりました。私は相続時精算課税制度をより理解する必要があったのでしょうか?

A.
 ご質問のケースでは、相続時精算課税制度についての理解が十分ではありませんでした。同制度については、贈与税が非課税であっても、相続時に「相続税」として精算されます。また、同制度を選択して申告を行った翌年以降は、贈与を受けても110万円以下なら贈与税は課されないという認識は誤りです。さらに、Webサイトを見て判断してしまい、税理士等の専門家に相談することなく実行してしまった点も、判断を急ぎすぎたように思われます。

 贈与時の税負担を減らして相続時に後払いする制度であることから、相続時精算課税制度は「生前相続」ともいわれます。しかし、この制度は2,500万円まで非課税であるということ以外にあまり理解されないままに用いられる場合が少なくないようです。
 相続時精算課税制度の非課税枠は選択後、一生の累計額2,500万円であり、適用対象者は贈与者については満60歳以上の親・祖父母、受贈者は満20歳以上の子・孫(養子を含む)とされています。届け出及び申告が必要で、税率は一律20%、相続発生時に、贈与財産は全て相続財産に持ち戻されて相続税が算出されます。したがって、累計2,500万円まで非課税というのは贈与税についてであり、相続税も含めて税金が全く課されないわけではないのです。
 なお、年110万円まで非課税という通常の「暦年課税制度」についても、相続開始前3年以内の贈与につき、「3年内贈与加算」という仕組み(贈与財産の価額を相続財産に加算するというもの)が存在します。相続時精算課税制度による贈与については、3年を超える(例えば10年以上前)の贈与でも、同制度選択後の贈与全てにつき相続財産に加算し、相続税の申告を行う必要があります。
 相続時精算課税制度を選択してからは、その選択を行った父母・祖父母からの贈与につき暦年課税制度を用いることは認められていません。仮に、父からの贈与につき相続時精算課税制度を選択して2,500万円を受け取った後に、父から110万円の贈与を受けたとします。その場合、110万円×20%=22万円の贈与税を申告します。そして、父の相続時には2,500万円のみならず110万円も相続財産に加算し、相続税で精算することになります。なお、払い終わっている22万円の贈与税は、相続税の前払いとして相続税から控除することが可能です。
 相続時精算課税制度の選択を検討する場合、メリットのみならずデメリットも認識しなければなりませんので、税理士等の専門家に相談することをお勧めします。

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