私は長い間不動産への投資を継続的にしていました。不動産への投資により相続税の評価が下がる仕組みを知っており、息子たちが税金を納められる範囲内で継続していたつもりです。この間、親しくしている不動産業者の紹介により海外投資セミナーに参加したところ、投資として海外の不動産が魅力的に思え、購入したいと考えました。日本語の対応をしてくれることや相場が年々上がっていることから、ハワイの不動産を勧められましたので、ハワイに出向きました。現地の不動産の内覧をさせてもらい、日本にはないとても魅力的な物件がありましたので、自分でも使えるホテルコンドミニアムを購入することにしました。帰国後、購入手続を進めていましたが、確定申告をお願いしている税理士に報告した際に、「海外の不動産は日本の不動産と評価が違うので、相続税が高くなってしまう可能性がある」と指摘されました。そして、「平成26年から国外に5,000万円を上回る財産を有している場合、税務署に国外財産調書という書類を提出する必要がある」とのことでした。投資としての利回りはとても魅力的ですので購入したいのですが、相続のことを思うと迷ってしまいます。国外にある不動産も国内の不動産と同様に相続税対策になると思い込んだのが間違いでしょうか?
Q.
私は長い間不動産への投資を継続的にしていました。不動産への投資により相続税の評価が下がる仕組みを知っており、息子たちが税金を納められる範囲内で継続していたつもりです。
この間、親しくしている不動産業者の紹介により海外投資セミナーに参加したところ、投資として海外の不動産が魅力的に思え、購入したいと考えました。日本語の対応をしてくれることや相場が年々上がっていることから、ハワイの不動産を勧められましたので、ハワイに出向きました。現地の不動産の内覧をさせてもらい、日本にはないとても魅力的な物件がありましたので、自分でも使えるホテルコンドミニアムを購入することにしました。
帰国後、購入手続を進めていましたが、確定申告をお願いしている税理士に報告した際に、「海外の不動産は日本の不動産と評価が違うので、相続税が高くなってしまう可能性がある」と指摘されました。そして、「平成26年から国外に5,000万円を上回る財産を有している場合、税務署に国外財産調書という書類を提出する必要がある」とのことでした。投資としての利回りはとても魅力的ですので購入したいのですが、相続のことを思うと迷ってしまいます。国外にある不動産も国内の不動産と同様に相続税対策になると思い込んだのが間違いでしょうか?
A.
国内にある不動産の評価については、土地の場合は原則として路線価評価か倍率評価を適用し、建物の場合は固定資産税評価を適用します。路線価評価は時価相場の約7割~8割、固定資産税評価は時価相場の約6割~7割と一般的にいわれています。また、賃貸物件の場合は、借家権や借地権を加味し、評価がより低くなります。
一方、国外にある不動産の評価については、原則として現地における売買事例評価額、地価の公示制度に基づく価額及び鑑定評価額等を参考に評価します。すなわち、不動産を購入してから、相場が上がれば相続財産の評価が上がります。また、為替の換算をしなければならず、円安になれば評価がより上がる可能性があります。
相続対策として国内にある不動産を購入するケースは存在します。また、国外にある不動産を購入し、評価が上がってしまって相続対策にならないというケースもあります。
日本の居住者の国外財産保有は、近年増加傾向にあります。そのような状況において、国外にある財産に関する申告につき、国外財産調書制度が導入され、平成26年1月より施行されています。この制度は、おおむね次のとおりです。
○提出義務者…その年12月31日において5,000万円を上回る国外財産を保有する居住者
○提出期限…その年の翌年3月15日までに税務署長に提出(所得税の確定申告が必要ない場合にも提出)
○記載事項…提出者の氏名、住所又は居所。国外財産の種類・数量・価額
○インセンティブ…提出の有無により過少申告加算税等が本税の5%相当額加減算
○罰則規定…正当な理由がなく提出期限までに国外財産調書の提出を行わなかった場合や、国外財産調書に偽りの記載をして提出した場合、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金
上記のインセンティブというのは、相続税や所得税の申告につき、国外財産に関する申告漏れがあった場合におけるペナルティ(過少申告加算税等)の取扱いが違うことです。申告漏れがあった財産につき、国外財産調書に記されていたものは、その申告漏れに係る部分の過少申告加算税等について5%減額されます。しかし、国外財産調書に記されていなかったものは、その申告漏れに係る部分の過少申告加算税等について5%加重されます。
国外不動産への投資については、為替変動や利回りを十分考慮するだけでなく、相続税の評価が国内不動産とは違うことや、国外財産調書を提出する必要があることも考慮しつつ、検討することが重要であるといえるでしょう。