私の父は創業社長であり、自社株式の大半を有しており、かつて大きく事業を拡大させ、内部留保は会社にかなり存在しました。相続対策も念頭にはあったようですが、対策を十分に講じないまま急に死去してしまいました。過去の利益蓄積はあるものの、死去するまでの4年~5年間、赤字が続いていました。業績が良かった時期に、「配当をなるべく出さなければ自社の株価を抑えられて相続対策にもなる」と知人に言われたようです。創業当時から配当を多く出していたわけではありませんが、近年は赤字が続いていたこともあり、無配を続けていました。父が死去してから、会社の株価を算定してもらうよう税理士に頼みました。赤字が近年続いていましたので、株価がそれほど高くならないと考えていましたが、「配当を出していなかったので、比準要素1の会社に当てはまり、想定されているより株価が高くなっています」と税理士に指摘されてしまいました。無配だったために株価が高くなってしまったのですか?
Q.
私の父は創業社長であり、自社株式の大半を有しており、かつて大きく事業を拡大させ、内部留保は会社にかなり存在しました。相続対策も念頭にはあったようですが、対策を十分に講じないまま急に死去してしまいました。過去の利益蓄積はあるものの、死去するまでの4年~5年間、赤字が続いていました。業績が良かった時期に、「配当をなるべく出さなければ自社の株価を抑えられて相続対策にもなる」と知人に言われたようです。創業当時から配当を多く出していたわけではありませんが、近年は赤字が続いていたこともあり、無配を続けていました。
父が死去してから、会社の株価を算定してもらうよう税理士に頼みました。赤字が近年続いていましたので、株価がそれほど高くならないと考えていましたが、「配当を出していなかったので、比準要素1の会社に当てはまり、想定されているより株価が高くなっています」と税理士に指摘されてしまいました。無配だったために株価が高くなってしまったのですか?
A.
非上場株式を評価する際には、類似する上場会社の株価に比準させた「類似業種比準価額」と会社の「純資産価額」に基づいて算出します。
類似業種比準価額の計算式は、次のとおりです。
A×{(b/B+c/C×3+d/D)/5}×E×1株当たりの資本金等の額/50円
A:類似業種の平均株価
B:類似業種1株あたりの年配当金額
C:類似業種1株あたりの年利益金額
D:類似業種1株当たりの純資産価額(帳簿価額)
b:評価会社1株当たりの年配当金額
c:評価会社1株当たりの年利益金額
d:評価会社1株当たりの純資産価額(帳簿価額)
E:斟酌率(大会社0.7、中会社0.6、小会社0.5)
新興の高収益企業については類似業種比準価額が高くなり、業歴が長く内部留保が多い企業については純資産価額が高くなるのが一般的です。
類似業種比準価額と純資産価額を、会社規模(従業員数、取引金額、総資産価額により決定)に応じて併用して算出します。具体的には、次の計算式で算出される額と純資産価額のいずれか低い方の価額を選択します。
○大会社…類似業種比準価額×100%
○中会社の大…類似業種比準価額×90%+純資産価額×10%
○中会社の中…類似業種比準価額×75%+純資産価額×25%
○中会社の小…類似業種比準価額×60%+純資産価額×40%
○小会社…類似業種比準価額×50%+純資産価額×50%
○比準要素1の会社…類似業種比準価額×25%+純資産価額×75%
配当、利益、純資産のうち2要素がゼロである場合、上記の「比準要素1の会社」に該当します。
類似業種比準価額は、その会社の配当・利益・純資産という三つの要素によって評価をします。すなわち、この三つの要素が低くなると株価も下がります。利益や純資産のコントロールは容易ではありませんが、配当は会社の判断だけで決められます。したがって、株価を抑えるためにも、利益が出たから配当を行うというのではなく、無配を続けることが珍しくありません。
ただし、比準要素1の会社に当てはまる場合には留意しなければなりません。ご質問のケースにおいては、会社規模は「中会社の小」に該当しましたので評価方法は類似業種比準価額×60%+純資産価額×40%を採ることができたものの、比準要素1の会社に当てはまってしまったことから類似業種比準価額×25%+純資産価額×75%となってしまいました。無配を続けたことから、、かえって株価が高くなってしまったのです。赤字が続いていても配当を少しでも続けていれば、比準要素1の会社に該当しませんでした。
自社の会社規模や類似業種比準価額、純資産価額がどの程度であるかについて、確認を毎年行い、比準要素1の会社に該当しない配当政策も検討しておくといいでしょう。