父の趣味は上場株式や投資信託などの投資で、財産の保全として、金地金も購入し、銀行の貸金庫に預けていました。父が死去し、財産の計算をしましたが、上場株式8,000万円、金地金2,000万円、現預金2,000万円、自宅4,000万円でした。遺産分割協議によって、母が現預金及び自宅を取得し、私はそれ以外のものを取得することにしました。私の納めるべき相続税額は約1,330万円で、私は上場株式の半分と金地金の全てを換金し、相続税を納めて相続税の申告も終えました。そして、残りをマイホームの購入資金に充当することに決めました。私はサラリーマンで、医療費控除を受けるため、自ら毎年確定申告をしており、今年も申告書を提出してしばらく経ってから、税務署から「株式と金の譲渡の申告が漏れている」との連絡を受けました。そして、相続財産につき、相続税を納めているものの、所得税も課されることを知りました。上場株式は、相続時点と同価額で売ったものの所得税計算上は約2,500万円の利益で計算されると指摘され、かつ、金の譲渡についてかなり高い税率が適用されて、納税分の資金を残していませんでしたので、困惑しています。所得税が課されることを考慮した上で、相続財産の譲渡を行うべきだったのでしょうか?

 

Q.
 父の趣味は上場株式や投資信託などの投資で、財産の保全として、金地金も購入し、銀行の貸金庫に預けていました。
 父が死去し、財産の計算をしましたが、上場株式8,000万円、金地金2,000万円、現預金2,000万円、自宅4,000万円でした。遺産分割協議によって、母が現預金及び自宅を取得し、私はそれ以外のものを取得することにしました。私の納めるべき相続税額は約1,330万円で、私は上場株式の半分と金地金の全てを換金し、相続税を納めて相続税の申告も終えました。そして、残りをマイホームの購入資金に充当することに決めました。
 私はサラリーマンで、医療費控除を受けるため、自ら毎年確定申告をしており、今年も申告書を提出してしばらく経ってから、税務署から「株式と金の譲渡の申告が漏れている」との連絡を受けました。そして、相続財産につき、相続税を納めているものの、所得税も課されることを知りました。上場株式は、相続時点と同価額で売ったものの所得税計算上は約2,500万円の利益で計算されると指摘され、かつ、金の譲渡についてかなり高い税率が適用されて、納税分の資金を残していませんでしたので、困惑しています。所得税が課されることを考慮した上で、相続財産の譲渡を行うべきだったのでしょうか?

A.
 ご質問のケースにおいて、相続した上場株式及び金地金の売却に係る所得税及び住民税は、次のとおりです。
○譲渡価額…金地金2,000万円、上場株式4,000万円(計6,000万円)
○取得費・譲渡費用(相続税の取得費加算額を含む)…金地金500万円、上場株式1,500万円(計2,000万円)
○税率…金地金43%、上場株式20%
○所得税・住民税…金地金約491万円、上場株式約500万円(計約991万円)
 売却による資金調達については、売却額6,000万円で、相続税額△1,330万円、所得税・住民税額△991万円、マイホーム購入額△4,500万円であり、不足額は△821万円です。

 ご質問のケースでは、相続財産を譲渡した際に所得税が課されることや、所得税の計算において取得費は被相続人の取得費を引き継ぐこと、また、金の譲渡につき、総合課税によって超過累進税率が適用されますので、給与所得を合わせると高い税率となってしまうことを知りませんでした。

 株式を取得したものの換金して他の用途に現金を用いたい、相続税の納税資金が不足しているといった理由から、相続した財産を譲渡することは珍しくありませんが、譲渡すれば相続税の他に所得税や住民税が課されることに留意すべきです。そして、そのような負担も念頭に置き、換金後の現金の使途を考える必要があります。
 相続した財産を相続後一定期間内に譲渡すれば、相続税を納付した者に限り「相続税の取得費加算の特例」の適用を受けることができます。適用期間は相続開始日より、相続税の申告期限の翌日より3年を経過する日までであり、適用要件は添付書類の他に確定申告書を提出することです。譲渡所得の計算において、次の金額を取得費に加算することが可能です。
 取得費に加算する相続税額=その者の相続税額× その譲渡した資産の相続税評価額/その者の相続税の課税価格+その者の債務控除額
 譲渡所得税の計算時には、取得費の金額は、相続税を申告した際の評価額を用いず、死去した者がもともと取得した際の金額を引き継ぎます。したがって、先祖代々の財産やかなり前に購入した財産であれば、取得費が不明であったり低額であったりする場合も少なくないでしょう。取得費が不明である場合などには、概算取得費(譲渡価額×5%)を取得費とすることが認められています。ただし、この方法によると、譲渡取得税の計算において、利益が大きくなって所得税が高額となる場合が多いことに留意しなければなりません。
 金地金の売却については、株式や土地と異なり、総合課税の対象となって、超過累進税率により課税されます。不動産所得のある不動産貸付業の経営者や給与所得のあるサラリーマンは、毎年の収入に金地金の譲渡所得も合わせて計算することとなります。したがって、税率が上がり、予想外に税負担が重くなる場合がありますので、何年かに分けて売るなど、工夫することが重要です。

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