私の父は16年前に死去し、その当時、長男である私たち夫婦と両親が同居していた自宅不動産3,000万円と、夫婦の老後の資金にと蓄えていた現金3,000万円を、父は残してくれました。父の納骨時に、2人の弟に対して「どのように相続するか話し合いが必要だ」と言うと、弟たちは「母さんは今後生活費がいろいろと必要だろうから、お金は母さんが全てもらい、安心して老後の生活をしてほしい。兄さんはこれまで父さんの世話をしてくれたので、自宅はそのまま兄さんがもらって。僕たちがこの家をもらっても仕方がない」と話してくれました。私は、母の世話は長男である私がきちんとしていこうと決心しました。以後は多忙でしたので、相続財産の額が相続税の基礎控除以下であることのみを確認し、遺産分割協議書を作成せず、自宅の名義変更手続もしないで、現在に至っています。長い間認知症だった母が、先日死去しました。母は年金収入だけで生活していましたので、父の遺産3,000万円の大部分は母の通帳に残っていました。母の通夜で久々に会った弟たちから「実は子供たちが大学と高校に通い始めたので、いろいろとお金が必要で大変だ。早いうちに、母さんが残した父さんの遺産を分割してほしい」と言われました。私は驚きつつ「母さんは長い間認知症で介護が非常に大変だったが、生活費や介護費は母さんの年金で賄ってきたので、通帳には3,000万円残っている。介護などで世話をしていた場合には法定相続分以外に寄与分という取り分が認められるみたいだけど、お前たちもお金が必要で大変そうなので、今回は平等に3等分しようか」と伝えました。しかし、弟たちは「自宅は兄さんにあげてもいいけど、母さんの残したお金は僕たち2人が半分ずつもらうよ。僕たちは、自宅を含めて本来なら2,000万円ずつ財産をもらう権利があるのだから」と主張してきました。私は「父さんの相続は済んでいるのだから、母さんの相続とは別問題だ。今回の相続に自宅のことは無関係だ」と言いました。しかし、弟たちは「父さんの相続時には不動産をもらわない代わりに代償分割金をもらうという方法を知らなかったけど、これまで相続についていろいろと勉強したので、兄さんの言いなりにはならないよ。当時は遺産分割協議書も作成していないだろう。兄さんが3等分と言うのであれば、自宅の名義変更書類には押印しない」と主張してきました。以前とは変わってしまった弟たちにがっかりしつつ、自宅を奪われないように、母の残したお金を全て弟たちに譲ることにしました。しかしながら、以後はわだかまりを抱え、弟たちに連絡することはなくなってしまいました。父の相続時に、遺産分割協議書を作成して自宅の名義変更を行うべきだったのでしょうか?

 

Q.
 私の父は16年前に死去し、その当時、長男である私たち夫婦と両親が同居していた自宅不動産3,000万円と、夫婦の老後の資金にと蓄えていた現金3,000万円を、父は残してくれました。父の納骨時に、2人の弟に対して「どのように相続するか話し合いが必要だ」と言うと、弟たちは「母さんは今後生活費がいろいろと必要だろうから、お金は母さんが全てもらい、安心して老後の生活をしてほしい。兄さんはこれまで父さんの世話をしてくれたので、自宅はそのまま兄さんがもらって。僕たちがこの家をもらっても仕方がない」と話してくれました。私は、母の世話は長男である私がきちんとしていこうと決心しました。以後は多忙でしたので、相続財産の額が相続税の基礎控除以下であることのみを確認し、遺産分割協議書を作成せず、自宅の名義変更手続もしないで、現在に至っています。
 長い間認知症だった母が、先日死去しました。母は年金収入だけで生活していましたので、父の遺産3,000万円の大部分は母の通帳に残っていました。母の通夜で久々に会った弟たちから「実は子供たちが大学と高校に通い始めたので、いろいろとお金が必要で大変だ。早いうちに、母さんが残した父さんの遺産を分割してほしい」と言われました。私は驚きつつ「母さんは長い間認知症で介護が非常に大変だったが、生活費や介護費は母さんの年金で賄ってきたので、通帳には3,000万円残っている。介護などで世話をしていた場合には法定相続分以外に寄与分という取り分が認められるみたいだけど、お前たちもお金が必要で大変そうなので、今回は平等に3等分しようか」と伝えました。しかし、弟たちは「自宅は兄さんにあげてもいいけど、母さんの残したお金は僕たち2人が半分ずつもらうよ。僕たちは、自宅を含めて本来なら2,000万円ずつ財産をもらう権利があるのだから」と主張してきました。私は「父さんの相続は済んでいるのだから、母さんの相続とは別問題だ。今回の相続に自宅のことは無関係だ」と言いました。しかし、弟たちは「父さんの相続時には不動産をもらわない代わりに代償分割金をもらうという方法を知らなかったけど、これまで相続についていろいろと勉強したので、兄さんの言いなりにはならないよ。当時は遺産分割協議書も作成していないだろう。兄さんが3等分と言うのであれば、自宅の名義変更書類には押印しない」と主張してきました。以前とは変わってしまった弟たちにがっかりしつつ、自宅を奪われないように、母の残したお金を全て弟たちに譲ることにしました。しかしながら、以後はわだかまりを抱え、弟たちに連絡することはなくなってしまいました。父の相続時に、遺産分割協議書を作成して自宅の名義変更を行うべきだったのでしょうか?

A.
 父が死去した際の一次相続については、母が存命であるためにトラブルなく話し合いが行われる場合が多く見受けられます。しかし、母が死去した際に子供たちで行う二次相続の話し合いについては、トラブルとなる場合が大変多いのが現状です。一次相続と二次相続は相続人にとって全く別問題であるにもかかわらず、一次相続において財産を十分にもらえなかった相続人の不満が、二次相続において噴出するケースが多いからです。
 特に、平成27年より相続税の基礎控除額が大幅に減少し、相続税を申告する対象が増加したことから、トラブルとなりやすくなっているものと思われます。一次相続時には基礎控除以下だったことから遺産分割協議書を作成しなかった家族が、二次相続においては申告しなければならなくなり、問題が表面化するからです。
 一次相続時には円滑に話し合いがまとまったために家族を信じて不動産の名義変更を行わないままとなっていた場合に、時間が経って相続人の心境の変化によって話し合いの内容が覆されることがあります。特に結婚して新しい家族ができると、その配偶者の意見によって考え方に変化が生じることが少なくありません。一次相続と二次相続は別問題であるものの、一次相続手続が完了していない場合は、ご質問のケースのように二次相続において有利に財産を得るための手段にされてしまう可能性があります。また、感情のもつれから、お金の問題ではなくなり、不動産の名義変更書類にいつまで経っても押印してもらえなくなる場合もあります。もし、良好な関係であっても、相続人の誰かが認知症になってしまえば、成年後見人を立てるなどしない限り、遺産分割協議をすることが不可能となり、不動産の名義変更ができないままになってしまう可能性が否定できません。分割の話し合いがまとまれば、早々に遺産分割協議書を作成することが重要です。
 ご質問のケースにおいては、ご質問者が大変な思いをして母の介護をしてきましたので、寄与分をもらいたいという思いは理解できます。しかし、以後の関係を良好に保つためには、一次相続においてご質問者が多くもらったのであれば、二次相続においては他の相続人に多く分けることも大切です。3人兄弟の場合はトラブルとなりやすいため、そのように認識しつつ、お互いに譲り合いましょう。

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