先日、父が死去しましたが、父は遺言書を作成していませんでした。相続税の申告納税期限は死去を知った日の翌日より10カ月以内ですので、円滑に分割協議をまとめる必要があります。しかし、父の遺産の大半は不動産ですので分けにくく、また、全員が激しく主張しますので、分割協議がすんなりとはまとまりません。そのような状況下で、知り合いの不動産鑑定士より、父の不動産の一部につき「路線価評価だと時価よりかなり高い。時価鑑定をしたらどうか」と提案されました。相続税の負担を軽くしたいという思いから鑑定評価をお願いしました。その結果、土地の評価を大きく下げることができ、相続人全員が納得しています。以後、分割協議を再開し、法定相続分どおりに財産を分けることとなり、時価鑑定を行った土地については私の兄が取得することになりました。しかしながら、その土地については時価鑑定額に基づき分割協議を行い、他の財産については路線価評価に基づき分割協議を行ったことから、兄の取得する他の財産の取り分を増やすことになってしまいました。特定の不動産のみ時価鑑定額に基づき法定相続分で分割協議を行うことには、慎重になるべきだったのでしょうか?

 

Q.
 先日、父が死去しましたが、父は遺言書を作成していませんでした。相続税の申告納税期限は死去を知った日の翌日より10カ月以内ですので、円滑に分割協議をまとめる必要があります。しかし、父の遺産の大半は不動産ですので分けにくく、また、全員が激しく主張しますので、分割協議がすんなりとはまとまりません。そのような状況下で、知り合いの不動産鑑定士より、父の不動産の一部につき「路線価評価だと時価よりかなり高い。時価鑑定をしたらどうか」と提案されました。相続税の負担を軽くしたいという思いから鑑定評価をお願いしました。その結果、土地の評価を大きく下げることができ、相続人全員が納得しています。
 以後、分割協議を再開し、法定相続分どおりに財産を分けることとなり、時価鑑定を行った土地については私の兄が取得することになりました。しかしながら、その土地については時価鑑定額に基づき分割協議を行い、他の財産については路線価評価に基づき分割協議を行ったことから、兄の取得する他の財産の取り分を増やすことになってしまいました。特定の不動産のみ時価鑑定額に基づき法定相続分で分割協議を行うことには、慎重になるべきだったのでしょうか?

A.
 特別の定めがあるものを除いて、その財産の取得時における時価を、相続税を算出するに当たっての財産の価額とする旨が、相続税法第22条に定められています。実務においては、その「時価」の解釈として、国税庁による「財産評価基本通達」により算出します。
 土地については、上記の通達を基に、路線価評価や、固定資産税評価額に基づく倍率評価などによって評価します。しかしながら、上記の通達により算出する金額が、全財産の価額(客観的交換価値を示す価額)を必ず一義的に確定できるというわけではありません。
 したがって、個別に相続財産の客観的な交換価値を評価する方法を選択することにより、課税の公平が保たれます。土地については、不動産鑑定士による時価評価がこれに該当します。実務においては、この時価評価が、財産評価基本通達(路線価等)の定めによって評価した価額より大幅に低い場合、鑑定評価額に基づいて相続税を申告することがあります。
 遺産分割協議は、「時価」を基準に行うのが原則です。ただし、土地の時価を算出するのは容易ではありませんので、実務においては、路線価評価(相続税評価)を基準に遺産分割協議をすることも少なくありません。
 ご質問の事例のように、特定の不動産のみその時価鑑定額に基づき法定相続分で分割協議をした場合、その結果として、全体の相続税の負担は軽くなるかもしれませんが、その不動産を相続した者の他の財産の取り分が増加します。したがって、遺産分割時の財産の「時価」に関する検討を行うことが重要です。

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